タイランドエリートカードは、今や知る人ぞ知る非常に人気の滞在ビザとなっていますが、成り立ちや歴史については実はあまり良く知られていません。
エリートカードホルダーですら、TPCとエリートカードは今までどのような歴史を歩んできたのか知らない人が多いのが実情です。
今、非常に順風満帆に見えるエリートカードを販売するTPC社も実はタイの政治および歴史に翻弄されながら、今の地位を確立してきたのです。
今回は、タイの歴史を確認しながらエリートカードの歴史について記載していきたいと思います。
TPCとは?
TPCは、2003年8月29日にタイの民法および商法に基づき法人を登録しました。
その際、タイ内閣 観光・スポーツ省管轄の一つであるタイ政府観光庁(Tourism Authority of Thailand 通称TAT)を唯一の株主とし、登録資本金を10億THB、タイの予算手続き法BE 2502に基づき、国営企業として設立されたのです。
2024年現在20年の歴史あるタイの企業です。
TPCが設立された主な目的は、シンプルに外国人から収入を生み出すことです。
販売しているエリートメンバーシップには、公共部門と民間部門の両方から特典とサービスを提供することによって、富裕層の外国人やビジネスマン、投資家、長期滞在グループを引き付けることを目的としていました。
タイ政府観光局という国営企業からお金だけでは購入出来ない特権なども与えられています。
このような富裕層向けの移住・投資ビザプログラムは世界に多くありますが、タイランドエリートは、移住だけでなくそれ以外の多くのサービスを特典として追加している事に大きな特徴があります。
2003年当時は、国が発行する世界初のメンバーシッププログラムでした。
2003年に富裕層向けにエリートカードを販売し、外国人から収入を得ることを目的に設立されたのがTPC社なのです。
TPC社のVisionとミッション
次にTPC社の企業理念であるビジョン、ミッション、そしてコアバリューを見ていきたいと思います。
Vision
Asia’s Leading provider for extraordinary residency program crafted for friends of Thailand
非常に簡潔なビジョンなので、原文を載せさせて頂きました。
日本語に訳すと、
”タイの友達の為に作られた並外れた移住プログラムを提供するアジアのリーディングプロバイダー’”
企業ビジョンは、社員にも顧客にも誰にでも分かりやすくするのが鉄則だと思いますので非常に良いヴィジョンだと思います。
Friends of Thailandという言葉も印象的です。
誰にでも門戸が開かれていて、タイは世界中いろいろな国の人が訪れています。
タイの観光戦略らしいビジョンとも言えるでしょう。
ミッション
TPCには4つのミッションがあります。
- Providing Thailand’s Privilege entry VISA
- Providing most desired privileges and services to enhance members’ satisfaction and keep delivering beyond their expectation
- Enhancing luxury tourism of Thailand
- Supporting both public and private sectors to foster the growth of Thai economy
一つづづ日本語へ翻訳してみたいと思います。
- 特典のエリートビザを提供する事
- メンバーの満足を高め、期待を超える最も望ましい特典とサービスを提供する事
- 豪華なタイ旅行を強化する事
- タイ経済の成長を促進する為に公共・民間部門の両方をサポートする事
1と2は顧客の為のミッションですね。3と4はタイローカルに向けたミッションだと思います。
富裕層をタイに呼び込み、結果としてタイに住むタイ人が潤うようなミッションを掲げているのだと思いました。
タイ人からも慕われるような、理に適ったミッションだと思います。
コアバリュー
TPC社には4つのコアバリューがあるとしていてこれに重点をおいているとしています。
- Talent(才能)
- Proficiency(熟練)
- Customer-Centric(顧客中心)
- Service-Minded(サービス精神)
Talent(才能)
組織のメンバーを採用および選択し、効率と個人の成長と発展を促進し、活気に満ちたやる気のある雰囲気と持続可能な競争を生み出すことにより、熟練した経験豊富なスタッフの損失を減らします。
Proficiency(熟練)
スタッフの効率と効果を高め、あらゆる面で熟練した能力を向上させ、そして自社のシステムに革新性と創造性を融合させます。
Customer-Centric(顧客中心)
すべての従業員に、エリートメンバーの満足度向上と充実に努め、各メンバーを理解して奉仕するための知識を得るよう努めます。
Service-Minded(サービス精神)
各エリートメンバーのメリットと全体的な満足度を改善し、メンバーの期待を超える価値を生み出すことに焦点を当てます。
上記4つがTPC社のコアバリューです。
TPCのビジョン、ミッション、そしてコアバリューを見て来ました。
どれもしっくりくるもので誰にでも分かりやすくシンプルなのがとても好印象です。
実際にエリートカードメンバーであり、彼らのサービスを良く使用している私からすると彼らのサービスレベルは日本のものと変わらず、もしくはそれ以上かもしれません。
非常にホスピタリティ溢れるサービスを提供しています。これらも企業理念であるTPCのビジョン、ミッション、そしてコアバリューの賜物なのかもしれませんね。
さて、それでは、次に本題に移らせて頂きます。
本題のタイランドエリートカードの歴史を見ていきたいと思います。
タイランドエリートカードの歴史
まずタイランドエリートカードの歴史を振り返る前にタイランドエリートカードとは何か簡単に振り返ってみたいと思います。
タイランド・エリート・カードとは?
2003年当時タイの首相であったタクシン・シナワトラ首相が始めた国営プロジェクトです。
発売当時下記がエリートカードの特典となっていました。
・提携ゴルフ場で毎日1ラウンド無料
・提携スパ・マッサージで毎日マッサージ無料
・5年間有効なマルチプル・エントリー・ビザを発行(5年毎に更新可能)
・タイへの入国審査時に専用ゲートを使用したVIPサポート
・空港から市内までのリムジン送迎
簡単にまとめるとエリートカードは、お金を払えばタイでの滞在を許可するビザプログラムと考えて貰って問題ありません。
なお、タイランドエリートカードについては、別記事で下記にも記載しています。
こちらも参考にしてみてください。
当時、飛ぶ鳥を落とす勢いでタイ経済をけん引していたタクシン首相が作り上げたのがエリートカードなのです。
2003年から既に17年ほどの長い歴史があるのですが、実は最初の12年間は非常に不安定な不毛の時代でもありました。
2024年現在業績絶好調のTPC社ですが、今となっては嘘と思うかもしれませんが、一時はTPC社は倒産の危機も経験しています。
なぜなら、タイの政党対立、クーデターなど、しばしば政治的なバックボーンとして使用されてしまった為です。
これら長い不毛の時代を経て、TPCおよびエリートカードは強固な現在の地位を築いてきたのです。
それでは、タイの歴史を読み解きながら、タイランドエリートカードの歴史を確認していきたいと思います。
タクシン政権時代(2001年2月9日~2006年9月19日)
タイランドエリートカードは、2003年当時のタイ首相であったタクシン首相が始めた国営プロジェクトです。
タクシン首相は、警察出身で一代で巨大財閥を築いた起業家出身の政治家です。
今現在まで続くタイの政治的対立もこの方が作ってしまったと言っても過言ではないタイの歴史を読み解く上で非常に重要な人物です。
脱税、亡命、赤シャツ隊を用いた政治対立の引き金など悪いイメージが強いタクシン元首相ですが、経済の面では非常にタイに貢献した人物でもありました。
1970年代から建設計画が立ち上がっていながら、非常に広大な土地であるがためになかなか建設が進まなかったスワンナプーム空港を建設したのも彼の政治、経営手腕のおかげです。
また現在でも外国人含めて親しまれているAISというタイ随一の4G,5Gネットワーク、携帯会社を立ち上げたのもタクシン元首相です。
その他にも不動産デベロッパーであるSCアセットなども彼が立ち上げた関連会社となっています。
2003年当時エリートカードを販売し、当初の目標では100万人のエリートカード会員を獲得する事を目標としていました。
当時販売時の値段は100万バーツで米ドル決済の場合は25,000USDに設定されていました。
日本円で当時のレートとして約300万円ほどで販売開始されたのがエリートカードの一番初めとなります。
なお、この当時の一番初期のエリートカードが俗にいうAカードと言われるもので譲渡後も生涯有効のエリートカードとなります。
2006年4月以降に発売されたエリートカードはBカードと呼ばれているTPCから購入した方は生涯有効ですが、譲渡後に30年の期限付きに変更になるエリートカードとなります。
エリートカードは主に2つのタイプがあったのです。
なお、旧式タイランドエリートカードの種別については、詳細はこちらでは省かせて頂きます。
下記記事に詳細を記載していますのでご参考ください。
また、この2003年当時、タクシン首相は80枚の非売品のエリートカードを日本の貿易責任者やアメリカのバンカーや金融業界の著名人などに贈呈しています。
長期的には100万人のエリートカード加入者を受け入れ、1兆バーツの収益を生み出すと非常に楽観的な眺望が出されていました。
これがエリートカードの歴史の始まりです。
タクシン政権時にタイでクーデターで発生(2006年9月19日)
2003年にタクシン首相の元、販売開始されたエリートカードですが、発売後3年足らずでタイで政変が発生してしまう事態が起こります。
それが2006年のタイ軍事クーデターです。
反タクシン派の将校が当時の首相であったタクシン政権を倒すために行われた軍事クーデター事件です。
この事件をきっかけにタクシン首相は失脚し、国外へ追われ、事実上亡命の身となります。
この政変をきっかけにエリートカードおよびTPC社にとって苦難の歴史が始まります。
カードの販売はタイの治安を不安視する声と重なり、売り上げは伸び悩み、赤字が積み重なっていきます。
もともと、2003年当時も初期生涯有効のAカードの販売は芳しくありませんでした。
2003年の販売から4か月で10万人に販売することを目標にしていましたが、実際にはわずか400人にしか販売が出来ていなかったのです。
それに加えてこの政変が起こり、TPC社の累積赤字は積み上がっていくことになります。
TPC社は累積赤字を解消するため会員権価格を150万バーツに値上げを実施しました。
治安を不安視する声があるにも関わらず、価格をあげたことが裏目に出てしまい、エリートカードの販売は低迷していくことになります。
アピシット政権時代(2008年12月17日~2011年8月5日)
タクシン首相亡命後、下院議員でその当時民主党党首だったアピシット・ウェーチャチーワという政治家が首相の座に就きました。
アピシット政権時、エリートカードは苦難の時代となります。
アピシット政権は、タクシン元首相の政敵です。
ビジネスが上手くいっていないならば、潰してしまうのは資本主義経済上、仕方ないことかもしれませんが、
タクシンが作り上げたこのエリートカードには何の思いやりも義理もなかったはずです。
意図的とまでは言いませんが、タクシンの政敵が首相になり政権を握った事が仇となり、エリートカードは苦難の歴史を歩むことになってしまったのです。
TPC社自体は事業継続に意欲的でプランの変更や会員数を2500から2900人に増やしたいとも表明していました。
しかし、2009年時点でエリートカード会員数は2570名と言われていましたが、新たな会員の利用可能なゴルフ場やスパもどんどん縮小していきました。
利用も年24回までに変更され、会員に会費を返還してエリートカードを廃止するという話まで進んでいたと言われています。
また運用コスト削減のため、2008年11月には23人ものスタッフを解雇しています。
このような状況にあったため、当時のエリートカードメンバーからもTPC社へ多くの苦情が報告されていたようです。
2009年当時のエリートカードメンバーは2570名で、そのうちタイに居住していたのはわずか795名でしたが、2009年だけで200件もの苦情が報告されていました。
そして、創設以来14億バーツ近くの損失があったため、アビシット政権の際にエリートカードは中止することをほぼ決定までしていたのです。
ただし、エリートカードメンバーも黙ってはいませんでした。
もし、エリートカードが中止された場合、2500人のエリートメンバーは法的措置を取ることも辞さない態度を示していたのです。
この為、TPCの親会社であるTAT(タイ政府観光局)は法的措置が取られた場合の事も想定して事を進めていました。
TPC社は、アピシット政権時に政治的なバックボーンの影響をもろに受け、苦難の歴史を歩んでいたのです。
インラック政権時代(2011年8月8日-2014年5月7日)
2011年に総選挙でエリートカードを作った亡命中のタクシン元首相の妹であるインラック・シナワトラがタイの首相になります。
アピシット政権時代、苦難の歴史を歩んだエリートカードですが、このインラックが首相になったことで状況は一変します。
廃止の話しで進んでいたエリートカードですが、運営継続の協議が開始されるようになったのです。
この時点で14億バーツ(日本円で約50憶円)もの多大な累積損失がありながら運営継続を協議することになったのは、兄であるタクシンが作ったビジネスをどうにかして復活させたというインラックの個人的な感情があったにちがいありません。
タクシンおよびインラックはタイ人華僑です。
タイの財界は華僑が支配しています。CPグループやセントラルグループなどの大手財閥も元々は華人が作り上げたものです。
タイも五大幇(福建、広東、潮州、海南、客家)が進出しており、タクシン一族は客家系華人です。
華人は故郷及び家族の繋がりを一番として強くつながっています。
タクシン兄妹も例外ではなく、こういった家族の繋がりがエリートカード存続を協議することになった結果だと思います。
2012年度のTPCとエリートカードの状況
TPC社は2012年5月に35億バーツを生み出す4か年計画の下で4,000人の新規会員を獲得する見通しを表明しました。
目標は、2013〜2016年に年間1,000人のメンバーを獲得するとしていました。
まだこの2012年時点でエリートカードは販売開始されていませんが、翌年より再開するように事業計画が見直されていました。
2013年度のTPCとエリートカードの状況
ついに2013年にエリートカードが販売を開始しました。
2013年5月30日に「Money Can’t Buy」キャンペーンでエリートカードを再開すると発表したのです。
新しいエリートカード会員は200万バーツで20年になります。
年会費が新たに設定され、2万バーツとなりました。
現在も販売されている現行のエリートカードfor Elite Ultimate privilege (EUP) and Elite Family Premium (EFP) onlyと記載されているサービスは、Elite Ultimate privilege (EUP) と、Elite Family Premium と区分けされています。
これはこの2013年に販売再開したメンバーシップだったのです。
2013年当時、販売開始から12ヶ月以内に約1,300人の新会員が目標で、ターゲットグループは中国、香港、台湾、インド、ロシア、アセアン諸国としていました。
2013年5月時点で会員は2,535名で、全てが生涯会員です(AとB含む)
なお、2009年当時の情報で2570名でしたが、35名メンバーがすくなっているのは辞退したか、亡くなってしまったからだと思われます。
この当時の財務状況はまだ芳しくなく、2013年5月時点で、5,390万バーツの現金しか持っておらず、総資産は9,480万バーツしかありませんでした。
カード再開と共に新たなサービスを追加するため、不動産デベロッパーを募集して提携を模索したのも2013年のことです。
2014年タイ軍事クーデター発生(2014年5月22日)
2014年度は3,100万バーツに相当する317枚の新しく改訂されたエリートカードメンバーシップ販売することを目標としました。
2013年に販売再開されたばかりの直後である1年後にまたしてもタイで政変が起こります。
それが2014年タイ軍事クーデターです。
この政変のせいでインラックは兄のタクシンと同じようにタイ国外へ亡命の身となってしまいます。
この混乱の為、2014年度のカード会員販売額は、152人がエリートカード会員として加わり、売り上げは9,400万バーツのみとなってしまいました。
なお、2014年10月と11月に販売されたのは、3つのエリートカード個人会員(200万バーツ)とThailand Easy Access(TEA)パッケージ(50万バーツ)の60枚の会員のみという悲惨な結果に終わっています。
TPCによると、不動産開発者(ヌサシリ)との共同ブランドメンバーシップ(100万バーツ)と家族メンバーシップ(100万バーツ)は、10月と11月には販売できなかったようです。
2013年に販売開始されましたが、わずか一年後の2014年に政変がおこり、この影響をモロに受けてしまっていたのです。
TPC社の業績はまだまだ売り上げも芳しくない状況が2014年当時は続いていたのです。
プラユット政権時代(2014年8月25日~2023年)
2014年の政変を機に軍出身であるプラユット・チャンオチャが首相を一時的に務めることになります。
次の総選挙まで軍事政権トップとして政権を握る形になったのです。なお、2020年総選挙後も首相と続けています。
兄のタクシン、妹のインラックを追いやったのはタイの軍隊です。
プラユット首相は軍人であったため、タクシンとインラックの政敵とも取れます。
2014年当時のTPC社の財務状況は芳しくなく、多大な累積赤字が残っていた為、アピシット政権時と同じように苦難の歴史を歩むかと思われました。
しかし、TPC社は存続していきます。
そして、このプラユット政権時代に飛躍的に業績を伸ばしていくのです。
2015年度のTPCとエリートカードの状況
TPC社は2015年の年間支出として、2015年当時の総エリートメンバーである3,093人のカード所有者にサービスを提供するために月間1100万バーツが必要と推定されていました。
205年7月31日の時点で、2009年末の14億2000万バーツから減少していますが、TPCの累積損失は8億4,000万バーツ残っていました。
また多くの累積赤字が残っています。キャッシュフローは2億9,600万バーツでした。
そして、2015年10月にTPC社はそれまで9か月不在だったトップマネジメントであるマネージングディレクター(MD)のポジションとしてPruet Boobphakamを新しいマネージングディレクターに任命し組織改革に乗り出します。
彼は元タイ貿易代表の顧問であり、タイ国際航空(THAI)の商業運営担当副社長でした。
この新しいMDが、エリートカードに対して色々な新たなサービスおよび組織改革を実施していくのです。
2年前の2013年から始まった新エリートカードメンバーはこの時点で640名でしたが、海外からの購入が少ないということでまず、海外代理店を募集し、海外販売を強化しました。
次に国際的な不動産開発業者と協議し、共同ブランドのタイエリートプロパティメンバーシップの販売開始しました。
2020年から見て分かることですが、2015年に新しいMDに就任したこのPruet氏こそが現在の業績絶好調のTPC社を築いたと言っても過言ではなかったのです。
彼の多くの改革がのちの業績絶好調のTPCを築いていったのです。
2016年度のTPCとエリートカードの状況
2015年から82%純利益が増加し、1億9,500万バーツの純利益を記録しましたが、2016年3月31日時点で8億2,600万バーツ、2016年末時点で7億7,100万バーツの累積赤字残っていました。
また、2016年8月には新タイプのカードが4つ発表されました。
- エリートアルティメットプリビレッジ、
- エリートイージーアクセス、
- エリートファミリープレミアム、
- エリートプロパティパートナーシップ
2016年12月16日の時点で、タイのエリートカードの会員は4,037人で、2013年の会員数は2,508人から販売開始されてから1500人会員が増えており、順調に会員数が増えていきました。
新会員のうち、国籍別の上位5つのカテゴリは、英国(198)、中国語(149)、フランス語(128)、アメリカ人(126)、日本人(103)となっています。
2016年の新会員はイギリスが一位であり、中国よりも多かったのが印象的ですね。
TPCはまた、タイのエリートクレジットカードを導入するために商業銀行を模索し始めました。
クレジットカードの年会費は5,000バーツで、TPCは年会費から年間少なくとも1500万バーツの収入を見込んでいます。
今では存在しないエリートカードと提携したクレジットカードも2016年当時はこの時は模索されていたのです。
2017年度のTPCとエリートカードの状況
2016年に続いて、2017年2月にもTPCはさらに新しいタイプのカードが発表します。
4枚の新しいカードは、下記の通りです。
- 80万バーツの5年間会員向けのエリートファミリーエクスカーション
- 80万バーツの10年間会員向けのエリートファミリーオルタナティブ
- 100万バーツの10年間会員向けのエリートプリビレッジアクセス
- 100万バーツの20年間会員向けのエリートスーパリオリティエクステンション
この新たに追加された4枚のカードを持って、2020年に販売されているカードが全て出揃ったことになります。
また2017年当時、2009年の累積損失14億バーツと比較して、2017年3月末の累積損失は8億3千万バーツまで着実に減少しており、業績は改善されているとバンコクポストのインタビューで答えています。
2017年度上半期は、412名の新規メンバーがあり、2億3,300万バーツの収益を上げました。
2017年5月時点で4300人のメンバーがおり、さらに同年の11月20日には5040人となっています。
わずか半年で1000人近く会員が増えた計算になります。
最終的に2017年度は、4つの新しいメンバーカード発売開始し、さらに流通チャネルも拡大、海外代理店が新しいマーケティングを担当出来るようになったため、2016年から93%増加し、収益を増加させました。
様々な追加サービスが功を奏し、2017年度からエリートカードの販売は遂に軌道に乗り始めるのです。
2018年度のTPCとエリートカードの状況
2018年に入り、TPC社はさらに新たなサービスとして会員の拡大と支出と投資の促進するためにウェルスマネジメントサービスを開始します。
2018年のTPC社のテーマは「タイの友だちのために作られた移住プログラム」です。
この新しいキャンペーンの下で、居住者のニーズに合わせたウェルスマネジメントの導入したのです。
簡潔に説明すると、TPC社はタイで外国人がマンション(コンドミニアム)を購入することをサポート開始したのです。
また気になる会員数ですが、2017年10月から2018年5月まで、会員数は月平均127人追加されていき、新しいカードメンバーは増加し続けていきます。
2017年と2018年の新製品の発売により、前年同期の140%の成長を遂げたのです。
また、2018年にはTPC社による粋な計らいも行われました。
世界的にも大きく報道されたタムルアン洞窟遭難事故が2018年6月から発生し1か月超、タイ政府および世界各国のボランティアと共に洞窟での救助活動が行われました。
世界的に報道されたため、ご存じの方も多いかと思います。
最終的に7月10日に地元のサッカーチームの少年ら12人とサッカーコーチ1名の計13名が救出されました。
この絶体絶命の彼らを救ったのは外国人ボランティアでした。
この13名の少年らを救ったボランティア105名に対して、TPC社は、1600万バーツ相当のエリートカード(Elite Friends of Thailand)を贈呈したのです。
会社に余裕がなければ105名ものボランティアに無償でエリートカードを贈呈することは出来ないです。
このような粋な計らいを取れたのもTPC社の業績が上向いてきたからでしょう。
また、多くの国で巡回興行を増やすなど、いくつかの戦略を実施してきましたが、この成果が爆発的に結果として出てきたのが2018年です。
2018年度(2017年10月1日〜2018年9月30日)の会員数増加率は37%で、エリートカードに加入した上位5カ国は中国、イギリス、日本、アメリカ、フランスとなりました。
2018年より中国と日本が急成長している市場となり始めます。
会計上での営業利益は、2018年11月に6億バーツもあげることが出来ました。
2018年時点でのエリートカードメンバー総数は6,192名で、そのうち2,452名が初期メンバー(旧式タイランドエリートカードホルダー)となっています。
過去数年間、同社は営業担当者を倍増させてきたのです。
2019年度のTPCとエリートカードの状況
2019年3月25日時点で、エリートカードメンバーは7,617人になっていました。
そのうち2,445人が2013年より前に登録し、残りの5,172人が後に登録したとバンコクポストのインタビューで報じられています。
第1四半期(2018年10月から12月まで)の総収入は、前年同期比58.5%増の3億6,400万バーツで、2019会計年度(2018年10月1日〜2019年9月30日)の売上高が13億バーツで、前年比27%増加しました。
2019会計年度に2億バーツの純利益を計上しています。
2020年には、2460枚を販売目標とし、15憶Bの収益を予定し、今後数年以内に累積損失を解消すると予想を表明しました。
10年前の2009年時点では累積損失が14憶バーツあったにもかかわらず、わずか10年でこれを大幅に削減し、今後数年で無くすことが出来ると表明したのです。
2019年にはもう飛ぶ鳥を落とす勢いの会社へと変貌していたのです。
この状況では、いくら政敵と言えプラユット首相も閉鎖を命じる事は出来なかったと思います。
これも全ては新しく生まれ変わったTPC社の改革と新しいサービスのおかげだったのではないでしょうか。
2020年のTPCとエリートカードの状況
2020年初期からはコロナパンデミックが発生します。
中国を発症に、ヨーロッパ、アメリカ、南アメリカ、アジアと世界的にコロナウイルスは猛威を振るっていき、都市のロックダウン、旅行の制限が実施されていきます。
そんななかでタイも2020年3月中旬より非常事態宣言を発令し、ロックダウン、移動の制限を実施していきました。
タイでは、夜間外出禁止令や酒類販売禁止などその当時他国に比べて非常に厳しいロックダウンが課されました。
しかし、この対策が功を奏したのか、タイでは6月より国内ローカル感染が続きコロナを抑えられた状況が続いていくことになります。
そして、エリートカードの会員数ですが、2020年2月29日時点での会員数は9578人(そのうち中国人が20%)となっていました。
コロナが世界的に流行を始めてからエリートカードメンバーの販売は落ちるかと思われたのですが、売れ行きは予想外の好調を遂げていたのです。
タイが世界的にもコロナを抑えられている国と思われ、中国人からの申請が急増したのが一因と言われています。
また、同じく中国の香港で2020年7月より新しい法律である香港国家安全法が成立され、香港からの申請も380%増加しました。
中国からの新規顧客がコロナ禍においてもエリートカードの販売を押し上げていたのです。
また、TPC社は今すぐに入国が出来ない人のための計らいもしており,現行のエリートカードを新規で申し込んだ方のために無条件で半年間期間の延長を実施しています。
これも粋な計らいです。コロナが続いてしまったらおそらくさらなる延長も検討してくれると考えられます。
なお、2020年7月タイ国外にエリートカードホルダーは7255人いて、200人がタイ国内へ入国を希望しています。
そして、2020年7月末にはタイ政府はエリートカードホルダーに対して、ビジネス関係者と同様レベルでタイ入国を許可する声明を出しました。
現在は申請をして、書類許可が得られればエリートカードホルダーもタイ入国が出来る状態となっています。
そして、気になる業績ですが、2020年7月エリートカードビザの申請者は順調に20%も増加しました。
2020年度の最初の3四半期で1,761枚増加し10,363になりました。
ついにエリートカードの会員数が1万人を超えたのです。
2003年タクシン政権時代に販売開始され、当初100万人を目標としていたエリートカードメンバーですが、17年の時を経て初めて1万人を超えたのです。
当初の目標数の100分の1に過ぎないですが、驚異的な業績回復を見せています。
これからのTPC社とさらなるエリートカードの特典追加に期待し、当初の目標の100万人をいつの日か到達出来ればエリートカードホルダーとしては嬉しく思います。
2020年度 タイ商務省(DBD)のTPC財務会計情報
タイの商務省は商取引、消費者保護、企業活動を担当するタイ政府機関です。
ビジネスマンが特にお世話になるのがその中の事業開発局で、Department of Business Developmentの頭文字を取って通称 DBDと呼ばれています。
タイの法人は全てこのDBDでIFRSの基準に基づいた会計情報を報告する必要があります。
また私たち一般の方にも会計情報を公開しています。
今回このDBDからTPC社(法人登録番号0105546103468)の2019年度の会計情報を確認したので、最後に紹介させていただきます
財務状況
まず財務状況ですが、2019年にTotal Non-Current Asset(固定資産)が前年比6倍になっています。
内訳はDBD上では明らかになっていませんが、おそらくさらなる顧客呼び込みや新たなサービスのため、投資したのだと推測されます。
またEquity(資本)が前年比で100倍となっています。
この数字は非常に大胆な改革をしていることを意味していると推測されます。
収益
次に収益を見ていきます。
N/Aと記載され表示されてない個所が多く前年比と比べる事が出来ない指標が多いですが、ここではNet Profit(当期純利益)だけ見れば十分でしょう。
2017年度は前年比62%増、2018年は前年比215%増、そして2019年度は前年比約150%増となっており、右肩上がりで利益を上げていっています。
これは体感で感じていたことですが、実際に収益の数字で見ると稼ぐ、儲かる企業体質になっていることがよく分かるかと思います。
主要財務率
次に財務率を見ていきます。
こちらも収益表と同じくN/Aとなっており歯抜けになっているデータが多いですね。
見るべきポイントはROA(総資産利益率)とROE(自己資本利益率)の2つで十分です。
ROAは、ReturnOnAssetsの略称で総資産に対してどれだけの利益を生み出されたのか見る指標です。
ROAは一般的に5%以上あれば優良とされています。
あくまで一般論で全ての業界に当てはまるわけではないですが、一つの目安となります。
TPC社のROAは2017年は約3%、2018年は約5%、2019年は約8%と右肩上がりで数値を上げてきています。
収益性をよくした結果がROAの数値が上がってきている事にも数字として表れているかと思います。
ROEは、ReturnOnEquityの略称で自己資本に対してどれだけの利益を生み出されたのか見る指標です。
TPC社のROEは2017年は約ー20%、2018年は約ー200%、2019年は約196%となっています。
おそらく2017年、2018年は利益が出ているにも拘らず、債務超過もしくは長年の負債が多すぎた為マイナス表示となっていたと思われます。
指標としては意味のない数値となっていましたが、2019年には約200%となっています。
累積損失が解消し始め、収益性が向上しているのだと思われます。
財務サマリー
最後に財務サマリーを見てみましょう。
財務サマリーの注目すべき点は、Net Profit(純利益)が約1億8000万バーツ(約7億円)で前年比150%の利益を積み上げたことかと思います。
また、Net Profit Marging(売上高純利益率 売上高に対する純利益の割合)が過去5年で最高の39%となっています。
利益が出やすい企業体質になっている事を意味しており、この39%というのは驚異的な数字だと思います。
エリートカード会員向けにあらゆる特典サービスを追加していながら、このような数字が出ている事は凄い事ですね。
2022年時点のTPC財務状況
2022年のTPCの財務状況を確認してみましょう。
まずは、貸借対照表を見てみましょう。
総資産が約90億バーツに対して、総負債が約80億バーツ。
負債の内訳はわかりませんが、ここはタイ政府関連のタイ国政府観光庁(TAT)であるため、意図的にこのような形になっている可能性もあります。
しかし、負債総資産比率は90%近くあり、業績絶好調ではあり、内訳が分からないので何とも言えませんが、気になる点とはいえるでしょう。
次に損益計算書を見てみましょう。
純利益(Net Profit)が2018年は約7000万バーツ、2022年度には6億バーツ。純利益が10倍近くに成長。
総費用(Total Expenses)は、2018年には約2億バーツ、2022年度には約4億バーツ。
タイランドエリート旧会員の数は性質上、会員数の増減はないでしょう。
総費用は2倍にしかなっておらず、10倍に利益が拡大したのは大幅に会員が増えたことによって利益が拡大していると考えて良いのではないでしょうか。
売り上げ利益率(Net Profit Margin)も2018年から年々上がってきており、今や50%を超えるほどになっています。
TPC社は今や稼げる企業へと変貌していることが財務諸表からも見て取れるのではないでしょうか。
2023年のタイランドプリビレッジの状況
タイランドエリートが、2023年6月16日をもってのファミリーエクスカーション会員(5年間家族版)を廃止するとの発表されました。
2023年8月22日にはタイ貢献党の元実業家、セーター・タウィーシンが主層指名選挙を勝ち取り、第30代首相に選出され、これにより、2014年から続いたプラユット首相の時代は幕を閉じた形になりました。
そしてタイランドエリートメンバーシップにおいては大幅な価格増訂が決定され、2023年10月に2003年当初から親しまれてきた『タイランドエリート』から『タイランドプリビレッジ』へとメンバーシップの名称変更が行われ、新たにできた4つのメンバーシップ制度が始まりました。
2023年度の財務状況
次に2023年のTPCの財務状況を確認してみましょう。
まずは、貸借対照表を見てみましょう。
2023年度の貸借対照表
Total Current Assetsが47%増加、Total Non-Current Assets企業の固定資産(不動産、設備、投資など)が前期比で倍増。Total Liabilities(総負債)が71%増加。
この二つの数値から想定されることは、DBDでは細かな内訳までは確認できないため定かではないが、おそらく2023年に新しく出来たメンバーシップに伴う新たなプロジェクトで借り入れや債務の増加があった可能性あり。
また、Equity(純資産)が2020年度は150%増加、2021年は100%増加、2022年は50%増加、2023年は15%増加と前年比で縮小傾向にあるが、2020年から22年にかけてはコロナによる特需で大幅な会員数の増加が起因していると思われ、2023年は15%と増加率が減少していますが、成長が鈍化していると考えるよりは新しいメンバーシッププログラムを作成したことに起因しているのではないかと考えています。
上記を踏まえ総じてTotal Assets(総資産)が63%増加しており、企業が成長している可能性を示していると言えそうである。
2023年度の損益計算書
NetProfit(純利益)が前年比で33%増加している。
TPCは2023年度も継続して収益成長を達成していると言えるでしょう。
前年比で2020年72%増加、2021年56%増加と比較すると成長率は減少していますが、こちらはコロナによる特需であり、外部的環境の要因が強い時期だったため致し方なしと判断できそうです。
総じて、NetProfitは2019年から増加し続けており、ポジティブな状況を保ち業績好調であると言えるのではないでしょうか。
2023年度の財務指標
2023年度のRoAは約7%,RoEは約54%,Net Profit Margin(純利益率)は約43%となっており、過去5年と比較しても大きな変化はありません。
どの指標も高い水準を維持しており、効率的に資産を活用し収益を上げていると言えるのではないでしょうか。
2023年度の財務諸表(貸借対照表、損益計算書、財務指標)から総じてTPCの現状は少なくとも負債のみ大幅に増加するような事態に陥っておらず、Net Profit(純利益)も大幅に落ち込むことなく、大きなネガティブな事項はないといえるでしょう。
TPCは2023年も順調に企業として成長していると言え、経営状況は比較的良好なのではないかと思います。
2023年はタイランドエリート、TPCにとって新たなメンバーシップ制度の始まり、またタイランドエリートカードを発足したタクシン元首相が8月にタイに帰国するなど、大きな変革の年となったと言えるでしょう。
タクシン首相がタイに帰国したことは賛否両論あるかと思いますが、タイランドエリートカードを発足した人物そのものです。
TPCおよびタイランドエリートカードにおいては少なくとも追い風になっている面はあるといえるのではないでしょうか。
財務諸表を見る限り業績も好調の為、2010年代初期のころのような政治的に廃止されるような状況になるとは思えませんし、タイランドエリートカードにおいては良い流れが来ているような気もしています。
まとめ
中国武漢から始まったとされるコロナウイルス、中国による香港への国家安全保障法適用など他国からも注目を集め、今や飛ぶ鳥を落とす勢いで業績絶好調のThailand Privilege Card Company Limited(以下TPC)社ですが、タイの歴史に翻弄されながら今の強固な地位を築いてきたのです。
エリートカードホルダーである私も今回色々と調べながら勉強し改めTPC社の凄さを再認識しました。
なお、私は旧式タイランドエリートカードの紹介、仲介サービスもしています。
もし興味がある方は下記記事も参考にして頂ければ幸いです。
少しでも多くの方に旧式エリートカードのすばらしさを伝えられれば嬉しく思います。
Comments are closed